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小林章の欧文タイプ・セミナー「フォントのチカラ」に参加して。

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  • 2006/10/23 Mon 23:56
10月23日(月)に東京タイプディレクターズ・クラブ主催で女子美術大学杉並キャンパスで行われた小林章の欧文タイプ・セミナーにパネラーの一人として参加させて頂きました。
当日は、会場一杯の約250名の参加者で熱気あるセミナーでした。
小林章さんの落ち着いてわかりやすい語り口は、若い人が多くいる会場でも欧文への興味や理解を深める良い機会になったと思います。
葛西薫さん、中島英樹さん、祖父江慎さんなど有名人に混じっていくつかの質問に答える事になりましたが、素直で率直な質問が多かった気がします。
日本でセミナーと言うと知識の披露的な事が多い中、具体的で明日の仕事に役立つ小林さんの話の内容は定期的に続けて欲しいとの要望が数多くあったようです。
参加していただいた皆様ありがとうございます。
スタッフの皆様お疲れさまでした。

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美篶堂ギャラリーセミナー参加のお礼

10月3日から22日の期間、美篶堂ギャラリーにおいて作品展を開催しております。
多くの方にご来場いただきまして誠にありがとうございます。
ほとんど私は会場にはおらず美篶堂のスタッフの方にお任せしたきりになってしまい、せっかくご来場いただいた方とあまりお話ができず申し訳ないと思っております。
セミナー(10月8日)のご依頼から始まった美篶堂ギャラリーでの作品展は「HALLOWED GROUND」制作と丁度タイミングが合う形で開催することができ、また、立野竜一さん、白谷泉さんという素晴らしいカリグラフィとのコラボレーションも実現できました。そのせいかカリグラフィ関係の方にもたくさんご来場していただいております。

美篶堂セミナー、嘉瑞工房「工房雑話」にも報道関係、スタッフも含め100人近くの皆さんにご参加いただけました。
約半分以上の方がデザイナー関係の皆さんにも関わらず、書体名、人物名を言わない書体史などをお話しました。
知識ではないタイポグラフィの話しを、メモ取り禁止という、異例の方式でいたしました。多くの方が戸惑い、きっと書体名、人物名、年号、エピソードの羅列を予想(期待?)し、ご参加された方には肩すかしになったかもと思います。
知識も大事ですが、それを生かす考え方。「誰のために!、何のためのタイポグラフィ?」、「見ていただくタイポグラフィ!読んでいただくタイポグラフィ!だから技術や知識よりも考え方!」その考え方をお伝えしたいために、かなり実験的な形になりました。
もちろん全ての皆さんに短い時間でご理解いただけるとは思っておりません。私の講演技術では無理だと思いますが、何人かの方からは知識偏中のタイポグラフィを見直すきっかけになったとのご感想をいただきました。
まだ会期を残しておりますのでよろしければお立ち寄りください。
ひとまずセミナーのお礼まで。


有限会社嘉瑞工房
高岡昌生



●「誤植」とご指摘を受けたカンマについて●


現在美篶堂ギャラリーで開催中の作品展の作品の中に、あるサイト上で「誤植がある」との指摘を受けました。直接私に指摘あったわけではありませんが、誤解を生む恐れがあるので、以下のような見解を申し上げます。

展示品、カリグラフィとのコラボレーション作品(立野竜一氏との共作)本文最終行イタリック体の文中にローマン体の「カンマ」が入っているという箇所です。

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この作品で使用いたしました金属活字書体は、「Caslon old face, Caslon old face italic」と言います。約250年前のWilliam Caslon I (ウイリアム・カスロン1世 1720-1749)にまで歴史がさかのぼれるイギリスで最も有名な活字書体の一つです。1937年に Stephenson Blake 社に母型なども含め吸収されました。鋳造の鋳型は Stephenson Blake 社製と思われますが母型は H.W.Caslon & Co.Ltd. 時代の物と考えられます。
嘉瑞工房で保有し今回の印刷に使用した活字は Stephenson Blake 社から購入した、オリジナルの「Caslon old face, Caslon old face italic」です。
さて、誤植との指摘がありましたイタリック体の中の(ローマン体と見える)カンマについて、再度 H.W.Caslon & Co.Ltd. の見本帳で Caslon old face italic を確認すると、カンマは現代で言うローマン体の形をしています。


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Caslon だけではなく、同じ見本帳にある Baskerville old style italic にも同様のものがあります。
つまり、H.W.Caslon & Co.Ltd. の見本帳が作られた当時1920年頃には、イタリック体には「現代の我々が考える傾斜したイタリック体のカンマ」ではない状態で鋳造、販売されていました。その事は当時何の問題がなかったのです。ローマン体のカンマと流用(兼用)したのか、始めから作らなかったのかわかりません。今の感覚だと不思議に思われるかも知れませんが当時はそれで通っていたのです。
したがって当社の購入した Caslon old face italic のフォントに(現代の視点で考える)ローマン体のカンマが入っていた事こそ、正真正銘のオリジナルカスロンであることの証拠であり、私は誇りに思っています。
もし反対に購入したイタリック体のフォントに(現代の視点で見る)イタリック体のようなカンマが入っていたら、H.W.Caslon & Co.Ltd. から継承した Stephenson Blake 社が独自で母型を作り鋳造した可能性があり、コンマに関してオリジナルカスロンと言えなくなるかも知れないのです。したがって Caslon old face italicに(現代の視点で考える)ローマン体と思えるカンマが入っていることは「誤植」ではないと私は考えます。
もし、他の人がオリジナルの Caslon old face italic で組版したと言って印刷した文章に、現代でそう見えるイタリック体と思えるカンマが入っていたら、私はカンマに関してオリジナルの Caslon old face italic と言えないのではないかと、作者に質問するでしょう。

ラテンアルファベットの書体の歴史には大きな2つの流れがあります。一つのはカリグラフィの歴史。もう一つは金属活字の歴史です。タイポグラフィ原点は金属活字です。金属活字時代の印刷物の見解を述べる時に、金属活字そのものや歴史的背景を知らないで現代の視点で考えると腑に落ちない事がたくさんあります。


有限会社嘉瑞工房 高岡昌生
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James Mosley先生来社

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  • 2006/10/09 Mon 23:55
前St.Bride Printing Library館長で、現在 Reading University で客員教授をさ れている世界的書誌学者、James Mosley 先生が来社されました。
現在、印刷博物館で開催中の「近代印刷のあけぼの スタンホープと産業革命」 展の為に前日に初来日され、その翌日に来社されました。
父との昔話や、私の作品(現在美篶堂ギャラリーで作品展開催中)などをを見ていただき質問などさせていただきました。
今回、独自の解釈の(詩の)組版についてご意見を求めた所、問題無しとの答えをお聞きしホッとしたり、褒めていただいたりの感激の2時間でした。
2日後の武蔵野美術大学の課外講座にも行き、懇親会にも出席させていただきました。課外講座ではわかりやすく簡潔に文字の歴史を話され、数日前にセミナー で書体史をさせていただいた身にはとても役立つものでした。
そしてその2日後の13日に再び、印刷博物館のレセプションでお会いでき、なんだか私のために来日されたような一週間でした。私はお会いするのが3回目ですが改めて先生の知識豊富さとお人柄に触れとても幸せな体験でした。

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嘉瑞工房セミナーを開催いたしました

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  • 2006/10/08 Sun 00:14
美篶堂ショップ・工房・ギャラリー主催で嘉瑞工房セミナーを開催いたしました。

美篶堂セミナー02
「工房雑話 」----知識だけではないタイポグラフィーの話----
嘉瑞工房 高岡昌生 

当日は100人以上の方にいらしていただきました。
書体名やデザイナーの名前をなるべく出さず、知識ではなく考え方のエッセンスを中心にお話しさせていただきました。
詳しくは「工房雑感」をご覧ください。

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また、10月3日から22日まで、美篶堂ショップ・工房で嘉瑞工房の作品展を開催しています。
嘉瑞工房の最新活版作品である「Hallowed Ground」(Thomas Campbell による詩)や、これまでの作品類が展示されています。
今回はカリグラファーのミュリエル・ガチーニさんのご好意で、Thomas Campbell の当時の詩集をお借りでき、嘉瑞工房の作品と見比べることができます。
その他、活版印刷とカリグラフィーを組合せた作品として、Hermann Zapf 氏が装飾した作品や、デザイナーの立野竜一さん、カリグラファーの白谷泉さんとのコラボレーション作品も展示しています。


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左上:「Hallowed Ground」の作品 右下:Thomas Campbell の当時の詩集


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左は白谷泉さん、中は立野竜一さんとのコラボ作品。右はHermann Zapf 氏が装飾した作品。
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